十万喜さんと舞台

十万喜さんとは3月にあった舞台、怪盗レグルスの主催者。


十万喜さんとは実は2~3年前?くらいに知り合っていて、ビッグマウスチキンのことも知っていた。


初めてお会いしてから連絡をたまにとりあうことはあってもなかなかゆっくりお会いする機会がないまま月日が過ぎていた。俗にいう「顔見知り程度」の仲だったわけで。


そんな十万喜さんから突然の連絡。

今度舞台をやるから出演してもらえないか?と。

1度きり会ってご無沙汰している人でも、わしは縁がある人とは必ずまわりまわってまた会えるものだと思っているので「あぁ十万喜さんとの縁はここだ」と思ったのを覚えている。


ただ自分にはライブの予定が思いのほかてんこ盛で決まっていたので、そこだけ考慮していただく形でむしろすぐに出演をお願いした。


今回は2チームあることもあって、初めましての方の人数の多さが尋常ではなかった。

それがまたすごくわくわくした。

顔合わせの飲み会をして、さてこれからだ。

という矢先にわしは母親が倒れたことで離脱。

まだみんなの名前と顔が完全に一致しきれてないような状態だった。


このときに十万喜さんに連絡をしたのだけど、即答で「お母さんについててあげることが一番大事。それができる人と一緒にやりたい。待ってるから」と言ってくれた。

本当にこの瞬間からわしは十万喜さんに甘えた。


ほぼ1ヵ月…稽古に参加が出来なかったわけだけど、日が進むにつれて焦りが半端なかった。

台本はもちろん持ち帰っている。

稽古の動画も送ってもらっている。

でもそこに全力で集中するだけの余裕が常に病室にいた自分にはなかった。


このままいつ帰れるのかわからない。

これはいつ降板を言い渡されても仕方がない。

そんなふうに思っていると十万喜さんから

「神社でお参りしてきたよ!だからお母さん大丈夫」と連絡…

泣いた。


十万喜さんの優しさにも泣けたし、「待ってる」と言ってくれた十万喜さんを信頼してなかった自分のアンポンタンに気づかされた。


そうこうしてるうちにオープニングのアクションが出来上がったり、みんなの芝居が固まってきていた。

連絡はもらうのだけど、とにかく焦る。焦る。焦る。

そもそもアクションもダンスもしたことのない自分が送ってもらった動画で追いつかなくちゃいけない。

本当に焦り度100だった。


どうにか東京には戻ってみんなと合流。

みんなから「誰だっけ?」状態になると思っていたのに本当にあたたかく迎えいれてくれた。

今回主役のみくさんが言ってくれた「おかえり」が本当にうれしくて。今思い出しても泣ける。


戻ってから3回目の稽古の日。

わしは芝居もダンスも出来なくて十万喜さんに叱られた。当然の結果だった。

段階が1から10あるとしたら1を完璧に出来た。

じゃあ次は2だね!

なんてペースでやっていたら本番に間に合うわけがなかった。

毎日10やってきてみんなと合わせて追いつかなくちゃいけない。
それなのにわしは今日は1、明日は2なんて豚なことをしていた。

それでも十万喜さんはわしにちゃんとやってくれよと言ったあとにみんなの前でフォローを入れてくれた。

「途中参加で戻ってきたまーくんを置いてきぼりにしちゃってたかもしれない。こっちも責任があったよ」


…最悪だった。

なんで十万喜さんにそんなこと言わせてしまってるんだろう。申し訳ない気持ちで死にそうだった。

だって悪いのはわしが一人でやれなかったからなのに。


その日の夜も十万喜さんはわざわざ連絡をくれた。

「あんなふうに言ってごめんね。」

終わった。

完全に内田の中でこの瞬間にいろんなものが終わった。

どれだけ十万喜さんに気を使わせてるんだよ。

いつまで迷惑かけてるんだよ。

いつまで甘えてるんだよ。


わしはその日の夜、朝までかけてアクションもダンスもセリフももらった演出も全部叩き込んだ。

覚えてないことで十万喜さんに気を使わせることは二度とできない。


続編に続く…

うちだまさのり

伊豆の生んだシンガーソングライター なんでもやるからなんでも言っておくれ。 いつもカレー食べたい。

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